ガンパレード・マーチSS
5121小隊の非日常的事件のある日常

「ぎゃぁぁあああああああああああぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっっっっっっっっっっっっっっ!!」
 春の日差しもうららかなある日の午後。プレハブ校舎からコミケカタログを引き裂くような悲鳴が聞こえたのはそんな日だった。
「なんだ、今の声は?」
「速水にも聞こえたか」
「舞にも聞こえたってことは、気のせいじゃなさそうだね……。どこだろう?」
「おおかた、食堂兼調理場であろう」
 速水と舞が、プレハブ校舎一階の食堂兼調理場に向かうと、そこにはすでに人だかりができていた。
「いったい、何があったの?」
「あ、速水さん……と芝村さん。いえ、見てください……」
 壬生屋が指差したその先にあったのは、食堂の床で口から血を流して倒れている岩田の姿だった。ブータとののみが、不思議そうな面持ちで岩田をつついている。
「……なんだ、岩田か」
 速水のその一言をきっかけに、集まっていた面々は、
「岩田だしなぁ……」
「またかよー」
「あいかわらずね」
といった言葉を漏らしつつ、一人、また一人その場を去っていった。

・・・・・・・・・・静寂・・・・・・・・・・・・・

「オオゥ! なぜ、みんな行ってしまうのですかっ! この不肖、岩田裕が命をかけた一世一代のギャグだというのに!」
「ニャーッ!」
 一人岩田のそばにいたブータも、急に置きあがった岩田を見て驚いて走り去ってしまった。
「お、おのれー。……次こそは皆様を目くるめく官能の世界に導いてあげますよ」
 そう一人ごちる岩田であった。

 翌朝。尚敬高校校舎はずれは、いつにもましてにぎわっていた。
 ……というか、人だかりができていた。
「おはよう、みんな。……なに、あれ?」
 速水の視線の先には、いつも彼らが通っているプレハブ校舎が……無かった。
 正確には、プレハブ校舎の屋上に、巨大な物体がのしかかっていた。 校舎自体にも随所に得たいの知れないものが張り付いている。
「ねぇ、あの上にいるの、岩田君じゃないですか?」
 森が指差した、校舎の上の物体のその上に、人影が立っていた。
 ゆらゆらと動くその姿は確かに岩田だった。 ただし、きらびやかな衣装──衣装というよりは、周囲の物体と一体化した、大道具といった感じである──に身を包み、そこからは動けないようだった。
「小林○子……?」
 紅白歌合戦もびっくりである。
「はーっはっはっは。よくぞここまでたどりつきましたね! ですが、おまえの命もここまでです!」
 どうやら、このゲームのラスボスらしかった。

 十分後。尚敬高校会議室で、作戦会議が開かれていた。
「さて……。どうしましょうかね、アレ。」
 議長席に座った善行が、眼鏡を指で持ち上げながら言った。
「きまってんじゃねぇか! ぶっ潰すしかネエだろ!」
 隊内一の武闘派、田代が提案した。
「下手に触ると、倒れかねないですよ、あれは。それに岩田君のことだ、自爆装置の一つや二つ用意していてもおかしくないでしょう」
 いつもの落ち着いた口調で狩谷。
「つまり、彼に気づかれないように彼の動きを封じればいいのよね」
 狩谷の方を見つつ、森が言った。
「では、何かいい方法がある人は?」
 副委員長の原が発言を促す。と、石津が控えめに手を上げた。
「じゃぁ、石津さん」
「……呪うの……」
「却下」
 一秒で却下された。
「昼間でも……呪えるのよ……」
「昼でも夜でも却下、よ」
 黙って下を向く石津。
「デハ、祈る、というのはどうデスか?」
 ヨーコが提案した。
「却下」
 またしても一秒で却下。
「ひとつ根本的な質問なのだが」
「はい、芝村さん」
「なぜそうまでしてあれを排除しようとする? とりあえず我々に危害を加える様子は無いし、放っておけばいずれ飽きるだろう。」
 しーん、となる会議室。
 と、遠阪がまじめくさった顔で手を挙げた。
「私は……困ります」
「ほう、どのような理由で?」
「洗濯物が干せないじゃないですか!」
 舞を除く全員がこけた。
「ふむ……たしかにそなたにとっては迷惑な話だな。なるほど。」
 それでも舞は納得したようだった。
「え、えーと。それでは、他に何かいい作戦はありませんか?……速水君」
 立ち直った善行がずり落ちた眼鏡を戻しながら促した。
「そうですね……やはり誰かがこっそりと近づいて、彼の動きを封じるしかないんじゃないでしょうか」
「それなら、自分たちに任せてください。なぁ、来須」
「……」
 来須は相変わらず無口だった。
「では、接近行動は若宮・来須両名にお願いします」
「ひとついいかな?」
「どうぞ、茜君」
「作戦自体は悪くないと思うが、勘の鋭い奴のことだ。途中で気づかれるわけにはいかない。そこで、彼の注意を別の所にそらしておいたほうがいいと思うけど」
「確かにそれはそうね……。だけど、注意をひきつけるって、どうやって?」
 原がたずねた。
「ふっ、そんなこと簡単じゃないか」
「瀬戸口君」
「この速水君がふりふりエプロンをつけていけばすべて解決さ!」
 と言いながら、後ろから速水に抱きつく瀬戸口。
「わぁぁあぁっ!! ど、どうして僕なんだよ!?」
 真っ赤になって振りほどこうとする速水。
「ふ、ふしだらです!」
「…………!!!!」
 同じように顔を真っ赤にする壬生屋と舞。
「ははは、悪いわるい。だが、これなら十分奴の注意をひきつけられるんじゃないか?」
そう言って離れたあとには、ふりふりエプロンを身につけた速水がいた。
「…………」
 全員の視線が速水に集まる。
「あ、あの……」
「……決定ですね」
「そうね、珍しく意見が合ったわね」
 善行と原がうなずき合う。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!」
「本提案を、隊長権限をもって遂行します」
 速水を除く全員が拍手で賛成した。
「あっちゃん、かわいいのよ」
「……ののみちゃん……」
「めー、なの。そんななきそうなかおはめーなのよ」
 泣くに泣けない速水であった。
「ねぇねぇ、でも折角だからもっとインパクトのあるの考えない?」
「新井木さん……何かいい方法があるの?」
「え、いや〜。ちょっと思いつかないんだけど。言ってみただけっていうか〜」
「折角やから、いろいろ着せてみたらええんちゃう?」
「ふふふ、いいことを言うわね、加藤さん。というわけで、女子全員、思い思いの服を持って隣の倉庫に集合よ! ……芝村さん、いい?」
「な、なぜにわ、わ、わ、私にたずねるっっっ。別に、速水は私の物ではないっ……と思う……」
「よーし、所有者の承諾は取ったわ。さぁ、みんな行くわよ。……あ、男子は禁制よ」
「だから速水は私の物では無いとっ」
「ぼ、僕は男子なんですけど、原さんっ」
「何か聞こえた? 森さん」
「い、いえ……なにも。ねぇ、みんな」
 次の瞬間、会議室には男たちだけが取り残された。 みんな、何が起きたか理解できていない顔をしていた。
「……元気ですね……」
 という善行のつぶやきが全員の心のうちを代弁していた。

 三十分後。ふりふりエプロンを身につけた速水が、プレハブ校舎屋上にいた。 顔を真っ赤にしている。
「……なんですか、その格好は?」
「い、岩田くん……もうやめようよ、こんなの」
「ふふふ、そうはいきません」
「どうしたらそこから離れてくれるんだい?」
「ふふふ、それができたら苦労はしませんよ!」
「…………」
 どうやら、自分では出られないらしい。
「安心してください。自爆装置はしっかりと組み込んでありますから」
「組み込まないでくださいっ!」
「ここから出していただければ考えてもいいですよ」
 舞の言っていたとおり、放っておけば良かったと思い始めたその時。
「ならばそこから引きずり出してやる!」
 と速水の後ろから若宮が飛び出してきた。
「ッ…………」
 来須も一緒のようだ。
「うおおお、やめなさい、上官に向かってなんてことを!」
「隊長命令です。仕方ありません!」
「ええい、腕を引っ張るなっ」
「……首を引き抜かれるよりはましだろう」
「だからって、あ、あなたたち、このスイッチが見えないのですかぁ?」
「おおっ、それが自爆スイッチか」
「……ありがたくもらっておく」
「ああっそんな〜〜〜。イワタマン、大ピンチ」
 と、岩田は鰻のような謎の動きで若宮の手から抜け出した。 バランスを崩しながら来須に近づく。
「……!」
 左ジャンプでそれをかわす来須。だが、そこには……。
「ええっ、ちょっ、ちょっと!」
「ぬおお、どきなさい〜」
 バランスを崩した岩田の手が速水のふりふりエプロンにかかる。

びりっ

「ぁ……」
 破けたエプロンが、風に乗り、速水の体を離れる。
 その下にあったのは、速水の顔と同じぐらい真っ赤なチャイナドレスだった。 腰のスリットからちらりと見える太股が眩しい。
「…………」
「…………」
「…………」

岩田・若宮・来須の視線が速水に向いた!
岩田・若宮・来須の注意力が100下がった!
岩田・若宮・来須はぼうっとしている。
来須の手が垂れ下がった!
来須の手から自爆スイッチが離れた!
自爆スイッチは地面に落ちた!
自爆スイッチはONになった!

「……失敗ですか……」
 双眼鏡を顔から外して、善行はため息と共につぶやいた。 隣に立っている原をにらむ。
「……部下の教育がなっていないわよ、善行」
 目をそらしながら答える原。
「あああ、私の洗濯物が……」
 うなだれる遠阪。
「……校舎……ボロボロ……」
 端の方でつぶやく石津。

衛生官の仕事が、1000下がった!

「明日は一日、校舎の修繕ですね……」
 壬生屋の提案は全員一致で受け入れられた。

 そのころ、会議室では。
「だから、速水は速水の物であって、私の物ではなくて、で、でも近くにいると何となく気分が良くて……ああっ、だから、その……なんと言ったら良いか。と、とにかく、速水が他の女に笑いかけているのは私的には不愉快で……。そ、その……」
「にゃぁ」
 今日も、5121小隊は平和なようである。

- fin -

あとがき


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